伴秀眞くん
「僕は言葉を話すことや、勉強することは苦手だけど、絵を描くことが大好きです、ぼくの作品を観てくれる人が元気になり、幸せを感じてくれたら嬉しいです、世界中が幸せになりますように」。
白地のTシャツには伴秀眞くん(新野小5年生)の描いた絵がプリントされている。
「わあ、細かい」。
ハートや人の顔、目がランダムに描かれている。
中央のハートの鮮やかな赤がアクセントになっている。
油性ペンで引かれた線は迷いなく精密だ。
言葉で表現するのはとても難しい。
なぜならそれは伴くんの思うまま、ペンの動くまま、表現することに没頭する伴くんの心のまま・・・。
「この絵は大体2週間くらいで描きました」と少し首をうなだれて話す。
伴くんは、5歳のときに、自閉症スペクトラムの診断を受けた。
赤ちゃんの頃から、見る、聞く、においなどにとても敏感で環境に対応するのがつらかったという。
診断を受けた時に母の瑞穂さんは「やっとわかった。もっと早くわかってあげられたら」と話す。
絵を描くことに関しても彼の意思を尊重し「自分のペースで描くときは集中して、描かないときは全く描きません」とほほ笑む。
「絵を描くことがうれしい、観てくれる人が幸せになるように、いつも祈りを込めて作品に取り組んでいます」という伴くんのアトリエは、居間。
「小学生のうちに個展をしたい」と願っていた夢が一つかなった。
夢をかなえる手伝いをした、展示会会場の津山市院庄の手芸店トーカイの、小西千恵巳店長は「絵に引き込まれ、素晴らしいと感じた。
皆さんに見ていただきたくて、5月に展示をおすすめし、とんとん拍子に話が進みました」と話す。
実は今、伴くんはとても忙しい夏を送っている。
6月には岐阜県関市の「ギャラリームースあーとTシャツ展」でオリジナルデザインのTシャツを展示、販売。9月までは同県美濃加茂市の「ぎふ清流里山公園内やまびこ学校」でほたるアートスタジオ展示会に出展する。
思い出がたくさん作れる夏休みになりそうだ。
瑞穂さんは「私は彼を見守るだけです」という。
発達支援が必要な子どもを持つ家族には「自分の子どもの事を決してあきらめないで欲しい、お母さんは孤独な気持ちを持つこともあるが、地域や学校に、甘え、助けを求めることも大切」と話し「自分の子どものマニュアルは、既存の本などではなく、一番わが子を知っているお母さん一人一人がマニュアルだと思っています。
私はこの子がいてくれたから豊かな気持ちになれていると思っています」と慈愛に満ちたまなざしで伴くんを見た。
伴くんは絵を描くほかにも工作が好きで、昨年、津山市少年少女発明クラブのチャレンジ創造コンテストで岡山県代表に選ばれ全国大会にも出た。
その作品は「地球が美しく元気な星に戻ることを願って作った」とのこと、大胆かつ繊細な作品はいろいろな工夫がされており、伴秀眞ワールド全開だ。
取材に対して「僕はみんなに手伝ってもらわないとできないこともたくさんあるけれど、大好きな絵の取材は一人で頑張れたことがうれしい」と話してくれた。
伴くん長い時間ありがとう。
とても頑張っていたのが伝わってきた。これからも私たち地域の大人は、いつも温かく見守って行くことが大切だということを教えてくれた伴くん。
自分のペースでまた作品を作ってほしいと強く思った。
(取材ライティング・武本明波)