アットタウンWEBマガジン

古民家で癒されるギャラリーふう 陶芸は芸術か化学か

陶芸作家・奥田福泰さん

津山市野村の「ギャラリーふう」は、田園地帯の鮮やかな風景の一部になっている、モノトーンの落ち着いた古民家だ。
ギャラリー内は和紙のランプシェードや薪ストーブが奥田福泰さんの作品と共存しており、静かに時間が流れる、空気が爽やかだ。




奥田さんは津山市生まれ、20代から兵庫県で会社員をしていた。
陶芸は40歳になってから娘さんと陶芸体験をしたことからスタート、興味があって一緒に参加したがとりこになったのは父の奥田さんの方だったという。
「ろくろは当時相生市に陶芸指導に来ていた備前焼・鳴瀧窯の安藤騎虎さんに教えていただき、60歳で故郷に帰り創作活動を楽しんでいます」とほほ笑む。
 


使うのは信楽の土が多いという、「耐火度が高く、腰があるので形が作りやすいです。釉薬の発色もきれいですよ」。

作るものによって土の種類や工程が異なるのも陶芸の妙。奥田さんは、大らかな形をイメージしてふくよかで曲線が生きるような作品を作り出す。



さて本焼き(主に自宅工房の電気窯を使う)にはいる。

その前に素焼きをして釉薬(ゆうやく)をほどこすが、それは作家のイメージと火による化学変化が織りなす実験のようにも思えてくる。
釉薬を選び酸化、還元と向き合う、鉄分の少ない土では‥‥鉄分の多い土では・・・・幾千万通りある化学反応と作家の折り合いのつけようが作品に現れる不思議。
酸化すると緑になったり、還元すると赤茶色になったりとても微妙な化学の実験は無限だ。




須恵器の流れをくむ勝間田焼の復活会にも所属している。勝間田焼では土を作る工程から始まる。山で土を採取し、水に浸けドロドロに、ふるいで濾してゴミや石を取り除き乾燥、土練機にかけた後、菊練りし成形。
勝央町にある青勝窯で年1回窯焚きしている。勝間田焼は、無釉焼き締めで灰青色の素朴な焼きものだ。

奥田さんは、今後陶彫(とうちょう)に挑戦していくという。
陶器でしかできない表現で、置物などをつくっていく「自然の土が生み出す、自然のかたちを作っていきたい。
土で形ができても自然の重力で作品が焼く前にへたってしまうこともあり重力と向き合う。
形ができて焼く工程では化学変化も計算しているのだが、火にゆだねる気持ちを持っています」。
工房は化学工場を兼ねた、土、火への畏敬の場だと感じた。



土と火と作家が向き合い作り上げた作品が並ぶ「ギャラリーふう」、陶器たちは、それぞれ自然の力をもらった精いっぱいのおめかしをして存在感を示している。
どれをとっても作家の熱意が伝わってくる作品。押しつけがましくなく、自然に逆らわずそこにある。

奥田さんの作品は、同ギャラリーで観賞できる。予約で陶芸の体験もできるので問い合わせてほしい。

今後の奥田さんの展示会は次の通り。

全陶展支部展
10月15日~20日 11時~18時
 ギャラリー・TEN
  (東京都台東区谷中2-4-2)
*奥田さんが会員の全陶展の協賛、岡山支部などの会員も出展。
          
第20回記念 作州の民芸 ものづくり展
10月18日~21日 10時~18時(最終日は16時)
 アルネ津山4階地域交流センター
  (津山市新魚町)
 *津山民芸協会主催、12人の作家が展示予定。

ギャラリーふう
津山市野村376
電話 0868-29-1061

関連する情報

人気記事

新着記事