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地域を守りたい。

津山市高野町 井上晃さんと先本廣司さん

 津山市の高野町。国道429号から浜崎橋の東を北に折れたところに、朝、多くの人が集まっている場所がある。
集まるのは、初老の男性で缶コーヒーを片手に談笑している。ここが、見守り活動の拠点だ。「見守り隊といっても、毎朝、登校時に前を通る児童、生徒に声掛けをしていることくらい。大変な事をしている訳ではない」と先本さんはいう。




拠点には『不審者追放のぼり』や、『かけ込み110番』の大きな看板がある。
こども達が、万が一にも犯罪に巻き込まれそうになった時に、ここに駆け込んでこれるように通学時間帯は詰めているのだそうだ。
 元々、こども達を対象とした地域貢献活動を始めたのは井上さん。
井上さんは、若いころにヤンチャをするなど悪いこともしていたそうだ。行いを正すきっかけとなったのは、ある縁で知り合った平沼赳夫さんに戒められたことだという。その時の「本当に強い者は、弱い者を守る。弱い者こそ強がってみせるもの。武士道精神とは困っている人を助けるものだ」という言葉と、父親が逝去する直前に言った遺言のような「若いころ悪さばかりしてきたんだから、世の中に奉仕しろ」という言葉が重なったことで、まず広野地区で活動を始めることになった。


 そこでの活動は、昔に自らがヤンチャをしていた時に、戒めて貰ったように、こども達を見つけては説教をして回る活動だった。次第と活動に賛同してくれる人も増えてきて組織化していく。そうして広野地区青少年を育てる会を立ち上げることとなり、会長に就任する。




 井上さんが先本さんと高野での見守り活動も始めるようになったのは、自動販売機に補充する時に、近所に畑がある先本さんと、自然と会話をするようになってからだ。
あいさつ程度から始まったコミュニケーションも回を重ねるごとに深い話となり、そのうち青少年育成活動の話にもなった。
その話の中で、井上さんの広野での活動やそのきっかけの話などを聞き共感した。
先本さんも、孫が小学校に通学していることもあり、高野でも何かできないかと思うようになったのだという。




 最近、不審者のニュースが増える中、コロナで人間関係が希薄となっている。そんな今、仕事を引退した世代が忙しい親世代に変わって、地域のこどもを守る必要があるのではないかと考えるようになったという。
たまたま自動販売機の場所の道も通学路になっていることもあり、こどもたちの『駆け込み所』として「朝の通学時間帯だけでも人がいるようにしよう」ということにした。
それからすぐ、先本さんが自分で作成した、こどもSOSかけ込み所という大きな看板を設置したのだった。
そして、こども達に憶えてもらうこと、すぐに逃げ込んできやすいように、登校中に「車に気を付けろよ」「危ないことがあったらすぐここに来いよ」など声をかけるようにしているのだそうだ。
そして、井上さんが、自らの費用で作成した「不審者追放」と書かれたのぼりも掲げた。この一帯が住宅街ということもあり、周りではかなり目立っている。
本当は、下校時間帯も大勢で詰めておきたいとのことだが、今は先本さんが時々いるだけだ。
 最近、朝『かけ込み所』に行ってみると、誰かが掃除をしてくれている時があるという。
「少しずつ、やっていることを理解してくれる人が増えてきているのだろう」ということを実感したとのこと。




先本さんによれば「時間に余裕があり、活動に賛同した人は、誰でもいいので登校時間でも下校時間帯でも立ち寄って詰めて欲しい」ということだ。
 この『かけ込み所』の運営については、今のところ、何も縛りがないという。
田舎なので、身元を調べなくとも大概の人の顔は分かる。誰でもプラッと来て、プラッと帰ると言った感じでやっているのだそうだ。会員名簿も何もない。
責任を押し付けないように、自由意思で参加してもらい、帰ってもらうといったやり方だ。
それでも「1人でも多くの人に参加してもらいたい」との思いも強い。
というのも先本さんは、このかけ込み所が、こども達のかけ込み所だけではなく、イジメをはじめ、色々な相談も受けられるようになればとの希望を持っているからだ。
「親や先生の言うことを聞かないこどもでも、おじいちゃん、おばあちゃんの言うことなら聞くこともあるのではないか?」
○○さんの孫が△△さんの孫をイジメてるなどの話があれば、おじいちゃん、おばあちゃんがこどもに話をすることで、解決できることもあるだろうと思っている。
そして「ゆくゆくは、こども達の悩みだけでなく、大人でも誰でも、地域に住む人の悩みをここで聞けるような場所にしたい」と井上さんと話をしているのだそうだ。
 こども達の『かけ込み所』から『地域のよろず相談所』へ、井上さん、先本さんの地域の人への思いが伝わってくる話だ。
思いの実現に向かって、まだまだ頑張って欲しいものである。

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