その夜、JAZZBAR巴里でLenny kravitzの「Ill be waiting」に耳を傾けながら、SEのわっちゃんにその話をすると「彼女じゃないんだし。そこまでしなくていいよ。「命の果実」でも飲んでおけばいい」と的確なアドバイスをニャンキチにくれた。
「そうじゃなぁ」と小生は、ソブラニー・ブラック・ロシアンの紫煙が瞳にしみたのか、ミナミさんを諦めなければならない悲哀なのか、少し瞳が涙で潤んでしまった――
……数日後、
ニャンキチが親友の秀ちゃんと男同士でインド料理店ナマステ・ガネーシャで男同士に遠征。
右手だけでナン・カリーをパクつくことに挑戦した後……
(本場、インドでは右手だけで食事をすることがスマートでお洒落なのである。結局右手だけでは食することはできなかったのだが……)
「ヒデちゃん。美味しいねぇ」
「うん。凄く美味しい」
帰りのお会計の時には、ニャンキチは店員さん達全員に「ナマステー(ありがとう)」と感謝の挨拶をした。
そのナマステ・ガネーシャの駐車場で誰かが落としたのか!?捨てたのか!?恋愛成就の御守りをニャンキチは見つけた。
「ヒデちゃん!?大事な物だから近くの神社にお返しにゆこう!!」
「うん」
二つ返事で決まった。
すぐに、ニャンキチはヒデちゃんと一緒に大国主命と可愛いウサギの像がある出雲大社美作分院に、恋愛成就の御守りをお返しに向かった……
参拝した後に改元直後でもあるし、ニャンキチは一大決心をした。
そこの神社から、遠い黄昏ゆく淡いカフェ・ラッテ色と淡い薄紅色が混じりあったバニラ・スカイの空を眺めながら、ミナミさんにはちゃんとした彼氏がいる訳だし失恋宣言をするまでもないなと小生は思い、「ミナミさんには大切な彼氏がいることだし今回の恋も終わりにするよ」とニャンキチは秀ちゃんにぽつりと告げた。
「うん」
そして、ニャンキチは大好きだったミナミさんへの片想いを消えゆく霧雨のように諦めた……
その後、風の便りで聞いたのだが、ミナミさんは27歳の御誕生日に彼氏と無事御結婚されたそうである。
猫多川賞受賞作家マタタビニャンキチ先生物語~第二章~ヨモギの想い出(後編)
2019年08月04日